上司から、昇進の話をもらった。ありがたい話のはずなのに、気持ちが前に向かない。
「断ったら、評価が下がるのでは」「この先、声がかからなくなるのでは」。そんな不安から、迷ったまま引き受けてしまう人も少なくありません。
人事制度のコンサルタントとして制度を作る側から見ると、昇進を断っても、評価そのものに響くことは基本的にありません。ただし、給料は上がりません。
この記事では、昇進を断るとどうなるのかを制度の仕組みから整理し、断る前に確かめたいことを解説します。
- 昇進を断ると、評価と給料はどうなるのか
- 断る前に確かめたい3つのこと
- 角を立てずに断るための伝え方
- 昇進の打診を受けて、迷っている方
- 断ったら評価が下がるのではと不安な方
- 管理職以外の道も考えたい方
昇進を断る人は、実は珍しくない

昇進を断るのは、わがままに思えるかもしれません。でも、実際には断る人は珍しくありません。
今の人事制度の仕事の中でも、昇進を断っている人がいるという話は聞きます。各種の意識調査でも、管理職になりたくないと答える若手や中堅が多いという結果が出ています。
昇進は、引き受けるのが当然のものではなく、選べるものになりつつあります。
そもそも昇進に気持ちが向かない理由は、こちらで詳しく書いています。

昇進を断ると、評価と給料はどうなるのか

一番気になるのは、断ったあとのことだと思います。評価と給料に分けて整理します。
| 項目 | 断るとどうなるか |
|---|---|
| 評価 | 今の等級で求められることに対して評価される。断ったこと自体で下がるわけではない |
| 給料 | 上の等級に上がらないので、上がらない |
| 今後の打診 | 会社や上司による。断り方や理由の伝え方で変わる |
評価には、基本的に響かない
評価は、今いる等級で求められていることを、どれだけ果たしたかで決まります。昇進を断っても、その基準は変わりません。
今の等級の仕事をきちんと果たしていれば、断ったこと自体で評価が下がることは基本的にありません。
昇進を断っても、その等級で求められることに対して評価されるので、評価に響くことはないと考えています。
ただし、給料が上がらないのは事実です。上の等級の給与の幅に移らないので、昇格による昇給はありません。
ただし、給料は上がらない
一方で、給料は上がりません。昇格は、給与の幅が一段上がるタイミングでもあるからです。
断るということは、その昇給を手放すことでもあります。ここは、きちんと受け止めておく必要があります。
今後の打診がどうなるかは、会社や上司次第
一度断ったら、もう声がかからないのでは、という不安もあると思います。これは会社や上司によって違います。
「今は専門性で貢献したい」など、前向きな理由を伝えておけば、時期を変えてまた声がかかることもあります。
断る前に確かめたい3つのこと

迷っているなら、断る前に次の3つを確かめてみてください。
| 確かめること | なぜ大事か |
|---|---|
| ①何が嫌なのか | 役職の仕事そのものなのか、今の会社での管理職の形なのかで、答えが変わる |
| ②給料が上がらなくても、納得できるか | 断る=昇給を手放すこと |
| ③管理職以外の道があるか | 専門職コースなど、別の昇格の道がある会社もある |
①何が嫌なのかを、分けて考える
昇進が嫌なとき、その中身は人によって違います。マネジメントの仕事そのものが合わないのか。それとも、その会社での管理職の形が合わないのか。
私は前職で、研究開発のマネジャーとして働く自分をイメージできませんでした。高い専門知識を前提にしたプレイングマネジャーが多く、その専門性をどう身につけるかが見えなかったからです。
執筆者マネジメントそのものは、自分に合っていると思っています。合わなかったのは、その会社の、その管理職の形でした。
「役職が嫌」なのか「この会社のこの役職が嫌」なのかで、取るべき道は変わります。
②給料が上がらなくても、納得できるか
断れば、昇格による昇給はありません。今の給料のままでも暮らしや将来の計画が成り立つかを、一度考えておきましょう。
大企業の給料がどう決まり、なぜ差がつきにくいのかは、こちらで解説しています。


③管理職以外の昇格の道があるか
会社によっては、管理職とは別に、専門性で昇格していく「専門職コース」があります。断る前に、自社の人事制度にそうした道がないかを確かめてみてください。
大企業でのキャリアの方向性は、マネジメント以外も含めて3つに整理できます。


角を立てずに断るための伝え方


断ると決めたら、伝え方も大切です。
即答せず、考える時間をもらう
打診の場で答える必要はありません。「ありがたいお話なので、少し考えさせてください」と時間をもらいましょう。
前向きな理由で伝える
断る理由は、後ろ向きなものより、前向きな形にするのがおすすめです。「管理より、この専門性で貢献したい」と伝えれば、意欲がないのではなく、方向性が違うのだと伝わります。
断るときの言い方の例
実際に伝えるときは、たとえば次のような言い方があります。
- 「ありがたいお話です。ただ、今はこの分野の専門性を深めて、チームに貢献したいと考えています」
- 「今の仕事で、まだやり切れていないことがあります。もう少しここで成果を出させてください」
- 「家庭の事情で、今は責任の重さを引き受けきれません。状況が落ち着いたら、改めて考えさせてください」
どの言い方でも、感謝と、今の仕事への意欲をセットで伝えるのが大切です。
今の仕事への意欲は、はっきり示す
断ったあとも、今の仕事にはしっかり取り組む姿勢を見せることが大切です。今の等級の仕事をきちんと果たしていれば、評価が下がることはありません。
断った後のことも、知っておく


一度断っても、また声がかかることはある
一度断ったら終わり、というわけではありません。
一度断った人に、また昇進の打診が来るかどうかは、会社によります。会社として上がってほしいと考えている人には、時期を変えて声がかかることもあります。
だからこそ、断るときの伝え方が、次の打診につながります。「今は」という言葉を添えておくと、扉を閉じずに済みます。
家庭の事情で断るとき
育児や介護など、家庭の事情で今は引き受けられない、という人もいると思います。その場合は、事情をできる範囲で伝え、時期をずらせないか相談してみてください。
会社によっては、働き方を調整しながら役割を担える制度があることもあります。人事制度の資料や、人事の窓口で確かめてみるのがおすすめです。
まとめ
昇進を断るのは、わがままではなく、キャリアの一つの選択です。
- 断っても、今の等級の基準で評価されるので、評価には基本的に響かない
- ただし、昇格による昇給はなくなる
- 断る前に、何が嫌なのか、給料に納得できるか、ほかの昇格の道があるかを確かめる
- 即答せず、前向きな理由で伝える
大切なのは、「断ったらどうなるか」を知ったうえで、自分で選ぶことです。








