転職したい気持ちはある。でも、給料が下がると思うと、なかなか踏み出せない。
大企業で働いていると、今の待遇が「当たり前」になっています。そこから下がる道を選ぶのは、想像以上に怖いものです。
私自身、大企業から転職して、年収は150万円ほど下がりました。それでも後悔はしていません。下がる額を先に数字で確かめ、「ここまでなら下がっていい」という線を引いてから決めたからです。
この記事では、給料や条件が下がるリスクとの向き合い方を、私の実体験をもとに解説します。
- 転職で給料が下がるのが怖く感じる理由
- 額面の年収以外に下がりやすい「条件」
- 「下がっていい線」を決める3つの手順
- 実際に下がってみて分かったこと
- 転職を考えているが、収入が下がるのが不安な方
- 大企業の福利厚生を手放すと、どれだけ変わるのか知りたい方
- 内定の条件を、何と比べて判断すればいいか迷っている方
給料が下がるのが怖いのは、自然なこと

給料が下がることへの不安は、気が小さいから生まれるわけではありません。大企業で働いてきた人ほど、構造的に強く感じやすいものです。
大企業の給料は「上がり続ける」前提でできている
多くの大企業の人事制度は、若手のうちは毎年少しずつ昇給する前提で作られています。大きな差はつかない代わりに、下がることもほとんどありません。
前職もそうでした。たまに2段階昇給する人はいても、大部分の人は毎年同じくらい上がっていきます。
この環境に長くいると、「給料は上がるもの」が無意識の前提になります。転職で下がるのは、その前提が初めて崩れる経験なのです。
同じ金額でも、「減る」は「増える」より重く感じる
人は、同じ金額でも、得をするより損をする方を大きく感じると言われています。年収が100万円上がる喜びより、100万円下がる痛みの方が強く響きます。
だから、下がる額を頭の中で転がしているうちは、実際より大きく感じてしまいます。不安を小さくする近道は、感覚ではなく数字で扱うことです。
執筆者私の場合、お金のことは事前に試算していました。そのため、転職を決める段階では、そこまで迷いはありませんでした。
下がるのは給料だけではない。見落としやすい5つの条件


年収を比べるとき、多くの人は求人票の額面だけを見ます。でも、大企業の待遇は、給与明細に載らない部分にも広がっています。
転職で下がりやすいのは、次のような条件です。
| 条件 | 大企業でよくある形 | 転職先で確かめること |
|---|---|---|
| 住宅補助 | 借り上げ社宅、家賃補助 | 制度があるか。なければ家賃は全額自己負担 |
| 退職金 | 退職金制度、企業年金 | 制度があるか。なければ自分で積み立てる |
| 賞与 | 年2回の賞与 | 年俸制か。賞与込みの年収か |
| 残業代 | 実績に応じて支給 | 支給されるか。みなし残業か |
| 福利厚生 | 優待サービス、健康ポイントなど | 何がなくなるか |
私の場合:年収150万円減の中身
私の年収は、転職で150万円ほど下がりました。ただ、この数字は、給与に住宅補助を足して比べたものです。
前職では借り上げ社宅を使っていて、家賃補助と節税の効果は大きなものでした。下がった分には、この住宅補助がなくなった分も含まれています。
ほかにも、条件はいくつか変わりました。
- 退職金制度がなくなった
- 賞与はなく、年俸制になった
- 残業代は、引き続き支給される
- 優待サービスや、健康関連のポイントがなくなった
比べるときは、額面ではなく「住宅補助なども含めた実質の年収」で見るのがおすすめです。額面だけでは、差を小さく見積もってしまいます。



福利厚生の面では、下がった部分もあると思っています。優待サービスや健康関連のポイントは、転職先にはありません。
大企業の、給与明細に載らない恩恵については、こちらで詳しく整理しています。


退職金がない会社では、「自分で作る」前提で考える
見落としやすいのが退職金です。毎月の給料には表れないので、内定の条件を見ても気づきにくい部分です。
退職金制度がない会社に移るなら、その分は自分で積み立てる前提で家計を考え直します。退職金は「なくなる」のではなく、「自分で作るもの」に変わると考えると、整理しやすくなります。
「下がっていい線」を決める3つの手順


不安を小さくする一番の方法は、「ここまでなら下がってもいい」という線を、先に決めておくことです。線があれば、内定の条件を見たときに迷わずに済みます。
私が実際にやったことを、3つの手順に分けて紹介します。
①家計から「暮らせる最低ライン」を出す
まずは、毎月の固定費と、年に1回の大きな出費を書き出します。そのうえで、今の暮らしを続けるのに必要な手取りを計算します。
ここで出た数字が、割ってはいけない「最低ライン」です。このラインと内定の条件を比べれば、暮らせなくなるのか、少し我慢すれば済むのかが分かります。
私は、もともと家計管理をして、お金を貯めてきました。そのため、多少下がっても暮らせる前提で考えることができました。
②同じ業界の相場から「最悪のケース」を見ておく
次に、行きたい業界の相場を調べます。1社の条件だけを見ていると、その金額が高いのか低いのか判断できないからです。
私は、転職先と同じような研修会社の条件も見ていました。そのうえで、最悪の場合、実際の条件よりさらに100万円ほど低くても受け入れると決めていました。
最悪のケースを先に受け入れておくと、それより良い条件は「想定内」になります。不安が、判断の材料に変わります。
③下がった分を「取り戻す道」を描いておく
最後に、下がった分をどう取り戻すかを考えます。下がりっぱなしだと思うと、どんな金額でも不安は消えません。
私は、2つの道を考えていました。新しい仕事でスキルをつけて、給料を上げていくこと。そして、会社の外で稼ぐことです。
「一時的に下がっても、取り戻す道がある」と思えれば、下がることは投資に近くなります。取り戻す力の土台になる、市場価値の調べ方はこちらです。





試算をして大丈夫だと思えていたので、あとは自分がスキルをつけて給料を上げるか、外で稼げばいいと考えていました。
実際に下がってみて、分かったこと


転職して1年ほどたちました。お金の面で実際どうだったのかを、正直に書きます。
お金で困ったことは、一度もなかった
結論から言うと、お金の面で困ったことはありませんでした。事前に試算して、最低ラインと最悪のケースを確かめていたからだと思います。
不安の大きさと、実際に困るかどうかは、別のものでした。
額面に出ないものを、手に入れた
収入が下がった代わりに、手に入れたものもあります。
- 通勤が大変ではなくなった
- 自由に使える時間ができた
通勤や時間は、求人票の年収には表れません。でも、毎日の暮らしの質には直接かかわってきます。
年収を比べるときは、こうした「お金に換算しにくいもの」も、同じ天秤に載せてみてください。
使うお金が減っても、満足度は変わらなかった
意外だったのは、お金を使う機会そのものが減ったことです。それでいて、暮らしの満足度は前と変わっていません。
収入が多いと、支出も知らないうちに増えていきがちです。満足度とお金の使い方は、必ずしも比例しないのだと感じています。



収入は下がりましたが、満足度は保ったまま、使うお金が減った感じがしています。
ただし、お金以外で手放したものもある
一方で、お金とは別に手放したものもあります。社員10名ほどの会社に移り、関わる人の数がぐっと減りました。
大企業では、フロアに数十人、数百人の人がいました。関わる人が少ないことに少し寂しさを感じたのは、転職して初めて分かったことです。
条件を比べるときは、お金だけでなく「何を手放すか」まで見ておくと、入ってからのギャップが小さくなります。
下がるリスクを小さくするために、転職前にできること


給料が下がるリスクは、転職を決めてからでは小さくしにくいものです。小さくできるのは、転職前の準備です。
蓄えを作っておく
一番効くのは、蓄えです。目安として、生活費の半年分があれば、一時的な収入減はほとんどの場合乗り越えられます。
私が迷わずに済んだのも、それまでお金を貯めてきたからでした。貯金は、転職の自由度を上げるための準備でもあります。
家族と、数字で話しておく
家族がいるなら、収入が下がる話は一人で抱えない方がいいです。気持ちだけでなく、最低ラインや最悪のケースの数字もあわせて伝えると、相手も判断しやすくなります。
私は転職のことを、家族にそのまま伝えました。返ってきたのは「いいんじゃない」という言葉でした。
条件は、内定後に書面で確かめる
年収の内訳、賞与の有無、残業代、退職金、住宅補助。面接の場では聞きにくいことも、内定後なら確かめやすくなります。
この記事の表を使って、今の会社と1項目ずつ並べてみてください。数字が並ぶと、怖さの正体がはっきりします。
転職をためらう不安は、収入以外にもあります。ほかの不安の整理の仕方は、こちらで解説しています。


まとめ
転職で給料が下がるのが怖いのは、大企業で働いてきた人にとって自然なことです。ただ、その怖さの多くは、数字にしていないことから生まれています。
- 下がるのは給料だけではない。住宅補助・退職金・賞与・福利厚生まで含めて比べる
- 家計から最低ラインを出し、業界の相場から最悪のケースを見ておく
- 下がった分を取り戻す道を描いておく
- お金に換算しにくいもの(時間・通勤・人とのつながり)も天秤に載せる
私は年収が150万円ほど下がりましたが、お金で困ったことはなく、手に入れたものもありました。怖いのは下がることそのものより、下がる額を知らないまま悩み続けることです。
まずは今の待遇を、表の項目に沿って書き出すところから始めてみてください。




